イベントレポート:「CES 2020」に見た最新技術トレンド

 今年も新年早々の1月7日から10日にかけて、大規模な見本市「CES 2020」がラスベガスで開催された。世界中の64にのぼる国と地域から、4500社以上の企業が参加する一大イベントであるCES。その歴史は意外と古く、初回は半世紀以上前となる1967年の6月にニューヨークで開催されている。今年はソニーがクルマを出展し話題となった。そこから読み解く現在のCESの存在意義とは何だろうか。

CESはConsumer Electronics Showではない!

CESを「Consumer Electronics Show(消費者向け家電の見本市)」の略だと思っている方も多いだろう。実は自分もそうだと思っていたし、かつてはそれで正しかったのだ。しかし2015年からCESを主催する全米民生技術協会はCESを「Consumer Electronics Show」と紹介することを認めていない。またCESは国際的な技術イベントとして位置づけられているため「International CES」のような記述も認められていない。今のCESは略称ではなく、CESはCESというわけだ。

CESが「Consumer Electronics」の看板を下ろしたことは、出展企業のリストを眺めても感じ取ることができる。なぜなら参加企業を分類するカテゴリーが、実に36も用意されているからだ。それらのカテゴリーがカバーするビジネスの範囲は非常に広く、なんらかの形で「テクノロジーを介して」消費者と関わっている産業をほとんど網羅していると考えて良いだろう。もはやCESは消費者向け製品メーカーだけの祭典ではないのだ。

出展企業の傾向

それではCESにはどのような企業が参加しているのだろうか。日本企業は合計76社が参加しており、トヨタ、ニコン、日産、ホンダ、ソニー、パナソニックといった名だたる大企業も名を連ねている。特にトヨタなどのこれまで自動車メーカーと考えられていた企業は、「Moblity as a Service」(サービスとしての移動)を提供する方向へビジネスを拡張している過程にある。そういう意味では、従来型の産業に属していた企業が、新たにテック企業へと変貌してCESに乗り込んできたという見方が適切なのかもしれない。

出展企業のリストをアルファベット順に並べて眺めているときに特に目についたのは、「Shenzhen」から始まる企業が多いことだ。これは深センの英語表記だ。中国で経済特区に指定されている深センに居を構える(おそらくは)新興の企業が大挙してCESに押し寄せているイメージだ。他にも「Guangdong(広東省)」「Hangzhou(杭州市)」「Xiamen(厦門市)」といった中国の地名を冠した企業が多く見受けられた。日本企業の76社という数は決して少ないものではないが、新しい技術やサービスを持ち寄って紹介するCESのようなイベントにおいて、中国系企業の圧倒的なプレゼンスとの差を目の当たりにすると、少し寂しい気持ちになるのも事実だ。

ソニーが公開した電気自動車VISION-S

ソニーが電気自動車を出展した理由

出展した日本企業の中で最も注目を集めたのは、やはりソニーであろう。ソニーは「オーディオ」「ソフトウェア」「ビデオ」などに加えて、「車両技術(Vehicle technology)」というカテゴリーにも登録している。そして実際に「VISION-S」という名の電気自動車を公開した。外観は4人乗りの高級スポーツカーという体で、写真で見ても非常に完成度が高いことが伺われる。

それではソニーも、EV専業のテスラやその他の大手メーカーがひしめく自動車市場に参画していくのだろうか。これまでに発表されている情報を見る限りでは、そういう動きではないようだ。ソニーがVISION-SをCESで公開したのは、搭載されている要素技術のお披露目といった意味合いがあると思われる。これは、スマートフォン分野でのソニーの動きとも重なるものだ。

現在のスマートフォン市場は、ファーウェイなどの中国企業や韓国のサムスン、そしてアップルが高いシェアをとっている。ソニーも自社ブランドでスマートフォンを手掛けてはいるが、台数は決して多いものではない。しかし、市場に出回る多くのスマートフォンにはソニー製のイメージセンサー(画像処理用半導体)が搭載されている。つまりソニーは、スマートフォンのキーパーツを担うことで、スマートフォン関連のビジネスで確実に利益を出しているということだ。そして同様の戦略で(電気)自動車のマーケットにも乗り込んでいくことが予想される。VISION-Sには「安全性(Safety)」「エンターテインメント」そして「順応性(Adaptability)」という3つの分野の技術が投入されている。2020年代以降の自動車市場において、ソニーが目指す立ち位置は、これらの要素技術を自動車メーカーに提供することで存在感を出していく。VISION-Sは、まさにそのためのショーケースなのであろう。

盛り上がっている領域はどこか?

出展企業のカテゴリーが36にも及ぶことは前述したが、多くの企業が参加しているカテゴリーはどこだろうか。実際には1企業が複数のカテゴリーに登録していることも多く、カテゴリーごとの出展企業数の合計は、のべ1万3000社近くになるので、平均して1社が2~3カテゴリーに登録していることになる。出展企業が多かったのは、無線機器、スマートホーム、ウェアラブル、自動車(自動運転)、ソフトウェア/アプリケーション、人工知能などだった。

 

新たに追加されたカテゴリー

2020年から新たに「旅行と観光(Travel and Tourism)」というカテゴリーが追加された。旅行業・観光業がどうCESと関わってくるのか興味深いが、VR/ARや人工知能を活用した「Smart tourism」というキーワードが注目されており、より豊かな旅行の経験を提供するためにさまざまな技術が投入されようとしている。それ以外にも自走するスーツケース、ホテルや運送業などのサービス提供側向けのパワーアシスト器具などがこのカテゴリーに出展されていた。

自走式のトラベルスーツケース!
22kgのスーツケースを片手で持ち上げられるアシスト器具

「コンシューマー」を名乗らなくなったことで、CESはますます広範囲の技術トレンドを追いかけるための場として機能していることを感じた。そして、ソニーの自動車など、企業のジャンルを越えた製品も登場して来る。さて、来年はどんなニューカマーが現れてくるのだろうか。